「三度目の殺人」
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    2017年10月1日 t-joy博多 監督:是枝裕和

    もやりとする映画だ。
    事件の真相や「三度目の殺人」というタイトルに対して
    もやりとしたものが残る。
    それだけ、観客にゆだねた大人の映画とも言えるのかしら。
    役所さん演じる三隅はどこかぬるりとつかみどころなく、
    彼だけが知っているはずの真実さえ揺れ動くよう。
    福山さん演じる重盛は、
    裁判もビジネスとわりきった仕事ぶり。
    正しいことはしてるのだろうけど
    そこに司法の正義のような感じはしない。
    いや、ここに出てくる司法関係者皆に
    正義の匂いはあまりしない。
    裁判もまたお役所の仕事なのだという感じ。
    その中で、三隅には死刑判決がおりる。
    この判決がタイトルの「殺人」だとすれば
    三隅は自分自身を殺すことで裁いたのか?
    いや、この第三の殺人に加担した人間はほかにもいるのではないか・・・
    投げかけられたこのもやもやは嫌いじゃないけど
    やっぱり事件の真相を知りたい気持ちもあるよねぇ。
    あぁ、もやもや。

    | 立石 義江 | 映画観る日々 | 12:55 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    「散歩する侵略者」
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      2017年9月10日 ユナイテッドシネマキャナルシティ13 監督:黒沢清

      大好きなイキウメ前川作品の映画化。
      なかなかに豪華なキャスト。
      すごく楽しみなのと同時にすごく心配で公開翌日に見に行った。
      「太陽」映画化の時のコレじゃない感が強かったから。
      映画は別物と、オリジナルの脚本になるのは仕方がないとしても
      せめて前川さんの世界観みたいなのは伝わってほしいと思うから。

      結果、黒沢監督は冒頭からガツンと前川ワールドに連れてってくれた。
      つかみはOKのオープニングから前半は結構面白かったな。
      後半は、絵としてその辺りだしちゃうんだ?ってとこもあるけど、
      そこは映画だからね。
      舞台とは逆に絵にしなきゃしょうがないってのもわかる。
      でもやっぱり火の玉とか混乱する人々とかだしちゃうと
      なんかチープになるよねぇ。
      何よりも侵略の何が怖いのかのポイントがずれていく気がする。
      ラストシーンが舞台と違うのもやむなしだけど、
      なんかこの作品のキモになるとこはそれじゃない感が残る。
      いや、わたしの個人的好みかもしれないけど、
      一番怖いのはそれじゃない、とか、辛いポイントはそこじゃない、とか。
      ジャーナリストの桜井が暴走していく様とか
      桜井と侵略者の少年天野の共感する部分をだしたかったのかもしれないけど
      やっぱり余分な気がするなぁ。

      このあとWOWWOWで放送されたスピンオフの「予兆」もみたけど
      こっちのほうが面白かったかも。
      侵略者がガイドを支配していく様子とか
      支配されない特別な力を持つヒロインとか
      オリジナルな設定が加わり、より黒沢ワールドなんだけど
      むしろ、前川さんの描く怖さに近い気がした。
      概念を失くすことの怖さやじわりと侵入してくる侵略者の恐怖。
      火の玉飛んできて侵略されるなんてシーンはアメリカ映画に
      任せときゃいいんじゃね?

      | 立石 義江 | 映画観る日々 | 09:26 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
      「バーフバリ 王の凱旋」
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        2018年1月2日 KBCシネマ 監督: S.S.ラージャマウリ

        いやぁお腹いっぱい。
        今年の一本目の映画にふさわしいてんこ盛りの映画。
        ハリウッド向けに洗練された「きっとうまくいく」や「PK」とは
        一線を画したゴリゴリのインド映画。
        壮大な物語、ガチなアクション、華麗な歌と踊りと
        映画の夢と楽しみがムッチムチに詰まって、もう爆発しそう。
        客席で何度「ガハハ」と笑い転げたことか。
        ヒーロー・ヒロインも「今どき美男美女」ではなくて
        「正統派インド美男美女」の濃い顔立ちにガチ体型。
        いや、インド美女が欧米美女にない美しさなのはもちろんだけど
        しまいには、あのバーフの濃さに夢中な自分にびっくりだ(笑)。


        前作「バーフバリ 伝説誕生」を観た時から続編を心待ちにしてきたけど
        なにしろ7ヶ月たっているから、前作でどこまで語られていたか
        ちょっと忘れかけていて、
        その上、父も子も「バーフバリ」だからちょっと混乱しちゃって。
        え?え?そうつながるの?回想なげーよ?!とツッコミどころ多しなのも
        これまた楽し。
        前作をもう一度観た上で、再度観たいくらいだなぁ。
        バーフ親子の女性の口説き方とかいろいろ見比べたいわぁ(笑)。
        それにしても「王を称えよ」というコピーにも頷くしかないくらい
        王族って強いのねぇ。
        主役のバーフバリが果てしなく強いのはもちろんだけど
        ライバルのバラーラデーヴァもはいろいろ姑息な手段も使うけど戦士としてはガチで強いし、
        その父のビッジャラデーヴァも片手は不自由なのにすごい怪力だし。
        何より、国母様のシヴァガミの強さたるや、自分はおぼれ死んでも
        決して赤子を手放さなかったあの強さ(笑)。
        一度はちゃんと映画館で観るべき映画だと思うけど
        二度目は絶叫上映、
        もしくは、皆でわいわい言いながら上映会でもいいかもしれない。
        私も民と一緒に高らかに王を称えたい
        「バーフバリ!バーフバリ!! バーフバリ!!!」


        | 立石 義江 | 映画観る日々 | 12:41 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
        「新感染 ファイナル・エクスプレス」
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          2017年9月6日 ユナイテッドシネマキャナルシティ13 監督:ユン・ソンホ

          ゾンビ映画初体験。
          怖いのが苦手で、避けてきたゾンビ映画なんだけど、かなり面白かった。
          ていうか、まさかゾンビ映画で泣かされるとは思わなかった。
          まずタイトルがね、「新感染」って
          「新」しかあってなくて新幹線とは思わないっつーか
          演劇好きは「新感」まできたら当然「新感線」だろう!とかツッコミどころ満載(笑)。

          舞台は駅と列車の中だけ。
          逃げ場のない列車の中で次々とゾンビに襲われゾンビと化す乗客。
          最後まで生き残り、釜山に到着できるものはいるのか?
          言ってみればただこれだけ、かなり単純なつくりの映画なのに
          120分間少しも飽きさせない。
          自分で扉が開けられなかったり、
          暗いところでは音がないと反応できないゾンビのウィークポイントが
          少しづつわかってくるところとか
          群像劇としての、それぞれのドラマがよくできてるところとか
          映画としてうまいなー、よくできてるなーと感心する。
          が、ゾンビ映画なのに、というか、ゾンビ映画だから、なのか
          最終的にはガチで人間の感情や力がむきだしになる中でのドラマが一番面白い。
          噛みつかれたら終わりのゾンビ相手に、プロテクター的なもの巻いてるとはいえ
          素手でガツガツ闘う兄貴ソンファの男気とか。
          惚れた女を守れずに泣きながら一緒にゾンビになる高校生とか。
          何よりも、自分の娘を守り抜き、自らを葬るあの哀しくも壮絶な父の顔。
          いやー、泣いた泣いた。
          ソグは仕事中心で利己的な父の役のはずだけど、
          イヤな人に見えないなーと思ったら
          「トガニ」のあの優しい先生だ。
          もともと優しげな顔だちってのもあるけど
          刷り込みされてたのかしらね。

          | 立石 義江 | 映画観る日々 | 18:35 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
          「パターソン」
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            2017年9月5日 KBCシネマ 監督: ジム・ジャームッシュ

            なんでもないようなことがしあわせだったと思う。

            これだけは書きたくなかったけど、
            こう書いちゃうとものすごく陳腐になっちゃうけど
            でもほんとになんでもないしあわせにあふれた映画だったのだ。
            毎日同じ時間にベッドから起き上がるところから始まるパターソンの一日。
            隣には愛する妻がまだ微睡んでいる。
            もうこの毎朝の景色だけでじんわりとした幸福感と
            自分が失くしてきたものの喪失感で涙がでそうだ。
            バスの運転の仕事。
            天然っぷりと愛らしさをまきちらす妻。
            愛犬との散歩。
            いつものバーでの一杯。
            そして彼の日常の幸せの芯にはいつも詩がある。
            本当になんて幸せな風景なんだろう。

            彼が失ってしまった言葉たち。
            その時々の空気や色を映した言葉たちは二度と戻ってこないけれど
            彼は何も失くさない。
            さりげなくぶっとんでる妻のファッションと
            妻の創作料理(?)を食べた時のアダム・ドライバーの戸惑い顔が
            たまらなくかわいかった。

            | 立石 義江 | 映画観る日々 | 12:24 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
            2017年 映画ベスト10
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              いくらなんでも1月のうちには書かないとと、
              昨年の映画ブログもあげきってないですが先に昨年のベスト10。
              って去年も全く同じようなこと書いたと思う。

              2017年、映画館で観た映画は70本。
              その前の年が82本だからちょっと減った。
              芝居・ライブとあわせると153本。その前年はあわせて162本。
              お財布のこと考えるとあわせて150本くらいまでにしときたいところなので
              ま、こんなもんでしょ。
              洋画42本 邦画21本、旧作7本の中から
              今年も洋画、邦画に区別をつけず、順位もつけずのこの10本で。

              ●映画の楽しみ。
              ひねりの効いたストーリーや壮大な物語。
              絢爛な衣装やセット、エロスやアクションにドキドキわくわく、時々大笑い。
              みちみちに詰め込んでお腹いっぱいにさせてくれたのが
              韓国映画とインド映画ってのがね。さすが。
              「お嬢さん」
              「バーフバリ 伝説誕生」

              ●SFとかホラーとか、普段どちらかというと苦手と思ってる分野で
              「お。これは!」と言う作品に出会うとやはり嬉しい。
              たくさんの映画友のつぶやきに感謝。
              「メッセージ」
              「ゲット・アウト」
              ●今年話題のミュージカル映画より、私にとってはよっぽどこちらのほうが
               身体を揺らし、足を踏み鳴らしたくなる映画だった。
               「ベイビー・ドライバー」

              ●世界はここまで来てしまったのかという戦慄と共に
               緊迫する密室劇としての面白さとヘレン・ミレンのかっこよさ
              「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」

              ●今年は何と言っても菅田君の年。
              「共食い」の時から気になってたけど、16年の「溺れるナイフ」でドはまり。わかっていたのに「帝一の國」「銀魂」と見ては私の観たい菅田君じゃないーと泣きながら
              ついに出会えた、観たかったあなた。
              「あぁ荒野」

              ●邦画は小粒なものが多い印象。
              その中で「演劇人が創った映画は面白くない」「映画の中で劇中劇として出てくる舞台のシーンは面白くない」という私の固定観念を壊してくれた。
              「At the terrace」
              「貌斬り KAOKIRI」

              ●映画として、丁寧に作っているのももちろんだけど
              憧れるのは丁寧な暮らしと生き方そのもの。
              もちろん、真似事すらできないけれど。
              「人生フルーツ」

              次点
              「20センチュリーウーマン」
              「ドリーム」
              「ELLE」
              「女神のみえざる手」
              女たちの生き様と強さ。その生きづらそうなところもすべて愛おしいよ。

              「沈黙」で突っ込みどころ多すぎ、と思ってたアダム・ドライバーが
              どんどん愛らしくなってきたよ。
              「パターソン」
              「ローガン・ラッキー」


              | 立石 義江 | 映画観る日々 | 23:54 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
              「ELLE」
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                2017年9月2日 KBCシネマ 監督: ポール・バーホーベン

                どひぁあ、とてつもなくかっこよくて
                とてつもなく変態だ、エル。
                ある日、自宅への侵入者に襲われレイプされてしまうエル。
                病院や警察を頼らず、
                心当たりのある男達に探りをいれ自ら犯人捜しを始める。
                元夫・反抗的な部下・親友の旦那、魅力的な隣人。
                ひとくせもふたくせもある男達・・・
                というか彼女自身のひとくせ、ふたくせではすまぬ
                変態っぷりがだんだん露わになっていく。
                いや、全てが明らかにならないところがこの映画のいいところかな。
                犯罪者を父に持つ生い立ちや事件の記憶、
                彼女の中にある闇のすべてが明らかになるわけではない。
                でも、何者にも屈さず、
                どこまでも欲望に正直なエルの姿は
                痛快なほどにかっこいい。

                にしても日本映画には絶対出てこないタイプの女性だよね。
                50代(多分)で、母の顔だけじゃなくて、
                キャリアもがっちりで、欲望にもまっすぐ。
                日本では受け入れられないタイプってことなのかなぁ。
                現実にはいると思うんだけど、
                (私らバブル世代とか特に)
                そういう話はあまりうけないんだろうなぁ。


                | 立石 義江 | 映画観る日々 | 12:40 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
                「SING」
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                  2017年8月30日 ルイガンズシネマ 監督:ガース・ジェニングス

                  毎夏一度は行きたいと思っているルイガンズシネマ。
                  リゾートホテルのお庭で寝そべってビール飲みながら映画。
                  画面も音も映画館には劣るし、
                  途中で席を立つ人や花火の音、と気が散る要素もたくさん。
                  でも、ひと夏一回くらいはこんなゆるーい映画の楽しみ方もいい。
                  ただねぇ。今年は日にちというか、作品というか
                  行くタイミングを間違えたよう。
                  夏休みももう終わり、作品は家族連れでもカップルでも楽しめる「SING」ということで
                  芝生の上はびっしり、他人様の敷物を踏むことなしに歩けないくらい。
                  ビール買うにもトイレにも長蛇の列。
                  ビールのおかわり買う気にもなりゃしない。

                  いや、作品には満足しましたよ。
                  お約束のハッピーエンドとは言え
                  歌と踊りがご機嫌で
                  夏休みのお気楽映画にはぴったり。
                  私はカラオケとかあまり得意な人間じゃないけど
                  誰しも歌いたい、とか踊りたいとかいう衝動はあって
                  それをストレートにだせることは幸せなことだなぁなんて。
                  何より「劇場」が賑わうお話はやっぱり嬉しい。
                  まぁ来年はもっとのんびり環境では見たいけど。

                  | 立石 義江 | 映画観る日々 | 12:20 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
                  「ベイビー・ドライバー」
                  0
                    2017年8月23日 t-joy博多 監督:エドガー・ライト

                    ゴキゲンだ。
                    溢れる音楽とリズミカルな映像が、誰かを求めるせつない気持ちが
                    なんとも言えないグルーブ感がスクリーンからこぼれ出てくる。
                    ダンスのようだ。映画が踊っている。
                    踊るように、イヤホンから流れる曲にのって車を運転するベイビー、
                    パトカーを引き連れて華麗なステップを踏むように自在に走る逃亡車、
                    そして音と映像のシンクロで映画そのものが踊っているような不思議な感覚。

                    天才的な運転技術を持つベイビーは
                    その能力を買われて銀行強盗の逃がし屋として働く。
                    ウェイトレスのデボラと恋に落ち、
                    裏の仕事から抜け出そうとする彼とデボラの逃走劇。
                    ベイビー役のアンセル・エルゴート。
                    イケメンでも好みのタイプでもないけど
                    だんだんキュートに見えてくる、母性本能くすぐるタイプってのかしら?
                    まさにベイビー。
                    汚い手段で彼を追い詰めたはずのギャングのボスが
                    女との逃避行なら仕方がないと
                    サラリと彼の味方になるあたりが粋。
                    ギャング仲間のクレイジーっぷりもすさまじい。

                    ラストには賛否というか好き嫌いがあるかもなーと思った。
                    逃避行の終わりまででもよかったかもとも思うし
                    あのラストまであってこそ、彼の生い立ちまで含めての
                    決着がつくって感じもするし。

                    | 立石 義江 | 映画観る日々 | 23:03 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
                    「メッセージ」
                    0
                      2017年6月25日 ユナイテッドシネマキャナルシティ13 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

                      目から鱗だったな。
                      自分の思い込みやイメージが次々とくつがえされていく。
                      しかもその過程がなぜだか心地よい。
                      宇宙人と言えば侵略してくるものだ、と思えば
                      そこには穏やかに交流していく過程。
                      言語学者の仕事は机上で文献を解読するものではなく
                      まるで「新しい言葉」を共につくっていくような
                      コミュニケーションの積み重ねの解読作業。
                      そして、宇宙人もののSFだと思っていたら
                      時間ものだったという見事な着地点。
                      大技というより、緻密な技の積み重ねの詰まった美しいフィニッシュでした。

                      宇宙人=ヘプタポッドを受け入れるところからコミュニケーションを図ろうとする
                      言語学者エイミー・アダムスはとても「母」的な感じがして
                      それがあのフラッシュバックとも重なって
                      見事にだまされて(?)しまった。
                      そして彼女の強さがとても素敵。
                      時間を超えたメッセージを受けてしまった彼女が
                      それでも未来へと踏み出す姿がとても美しかった。


                      | 立石 義江 | 映画観る日々 | 12:55 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |