「火口のふたり」
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    2019年8月29日 中洲大洋 監督:荒井晴彦

    確かにかつての日活ロマンポルノみたいだ。
    かつて恋人同士だった男と女が再会し、
    再び身体を重ね
    離れがたくなっていく。
    「からだのいいぶん」に従って。

    一度だけ「あの頃に戻ってみる」の約束で身体を重ねたはずなのに
    男はどうにも我慢できなくなって
    結局二人は女の結婚式までの5日間を一緒にすごす。
    たくさんセックスをして、一緒にご飯を食べる。
    男が「セックスがこんなに気持ちよかったのを思い出した」
    みたいなことを言っていたのが印象的だった。
    離婚して職もなくした男には性も食もどうでもいいことになっていて、
    多分それは生きること自体がどうでもいいことになっていたんだよね。
    彼女との再会をきっかけにして、釣りをしながら魚肉ソーセージをかじっていたような男が
    アクアパッツァなんかつくっちゃう。
    そう、この映画、セックスのシーンも多いけど食事のシーンも多いのだ。
    食欲と性欲、この二人はこどもをつくるつもりなのか・・・のラストにもつながる
    生きることへの欲望がじわじわと募っていくのがわかる。
    劇中に使われている富士山の絵や
    かつての二人のなまなましいモノクロ写真も効いている。
    料理をつくる男の器用な手つきや、これらの作品をみてると
    彼は多分何かを創る系の人なんだろうという想像もできるし、
    性や食を取り戻したように、彼が創作を取り戻すかもしれないという予感もする。
    富士山の噴火と言う未曽有の災害を背景に
    どこまでも堕ちていくふたりの物語のようで
    実はふたりにとっての再生の物語。

    ふたりがかつての思い出話をするシーンも多いからか
    すごく個人的な昔の思い出を掘り起こしてくる映画でもあった。
    ラーメンもレバニラもアクアパッツァもハンバーグも
    どれもこれも食べたくなったけど、
    昔の彼が最後に私につくってくれたトマトのパスタが食べたくなった。




    | 立石 義江 | 映画観る日々 | 23:48 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    「ロケットマン」
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      2019年8月30日 ユナイテッドシネマCC13 監督:デクスター・フレッチャー

      どうしても比べられちゃうよね、「ボヘミアン・ラプソディ」と。
      私は「ボヘミアン・ラプソディ」がドキュメンタリーだとすれば
      「ロケットマン」はファンタジーだと思った。
      実在の人物の実際のエピソードが満載で
      主演のタロン・エガートンはエルトンそっくりのパフォーマンスをするけど
      何だかファンタジー。
      ミュージカル仕立ての楽しさのせいもあるけど
      きっと「エルトン・ジョン」って人物が、その人生がファンタジーなんだわ。
      正直私は自分の音楽視聴歴的に、エルトン・ジョンには
      フレディほどの思い入れはなかったけれど、
      親の愛を求め続けた少年時代の彼にキューンとしたし、
      何より彼の天才っぷりに改めて驚いた。
      日本人にはそういう文化がないけど、
      正直、もっと日本人もハグすればいいのに、最近時々思うのよね。
      大人になると、子供のように手をつないだり
      誰かに抱きしめられたりすることが少なくなって。
      私の場合は最近こどもの頃とは逆に、たまにお母ちゃんの手をひいてあげることがあるし
      ハグしてあげたくなることがある。
      私も少年エルトンを抱きしめてあげたい、と思ったし
      エルトンはちゃんと生きて、ハグして、ハグされる人生になったのが
      また嬉しくて。
      比べちゃいけないと思いながらもどうしても思ってしまうよ。
      あぁ、フレディ、どうして死んじゃったの?って。
      この映画を観てからエルトン・ジョンの曲をきいて
      あのぶっとんだ衣装を見るとまた印象がかわるよね。
      生来の彼のお茶目さや、
      それ故に道化のようにもなってしまう彼の哀しさ、
      背景にあった孤独や疎外感。
      でもやっぱり彼の物語はファンタジー。
      いつだって、どこへだって飛んで行ける気がするよね。


      | 立石 義江 | 映画観る日々 | 18:31 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
      「よこがお」
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        2019年7月30日 KBCシネマ 監督:深田晃司

        映画の宣伝コピーには「サスペンス」「復讐」という言葉が並ぶので
        主人公の市子がどんな復讐をしようとしているのかはすぐに察しはつく。
        しかも復讐の仕方がちょっと短絡的というかあさはかなんだよなぁ。
        男の人はこれを観て
        「女ってなんて怖ろしい復讐をするんだろう、こわすぎる・・・」
        と思うのか
        「しょせん、女の考える復讐ってあさはかなもんだよ」と思うのか
        どちらにしても、男の人の考えた女性像な気がして
        ちょっと萎える気持ちもあった。

        でもね、人の心理こそサスペンスという意味でいえば
        とてつもなく深く複雑なサスペンス。
        むしろ、こんなあさはかな復讐をする女が
        どんな風に堕ちていき、どんな計画をたてるか、とか
        どんな思いで妹の死やその息子のことを観ているかを抱えているかを考えると
        わざとこんなあさはかな復讐をさせたのかなぁとも思う。
        市子に友情や好意、以上の思いをよせる基子がどんな気持ちで彼女を陥れ
        どんな気持ちで憧れの彼女と同じ介護の仕事についたのか。
        誘拐事件を起こした市子の甥っ子がどんな動機で事件を起こし、
        母を亡くしたあとどんな気持ちで市子と暮らし始めたのか。
        何もかもが謎で理解しがたいのに
        カメラが映し出しふとした彼らの表情にいろんな思いをくみとってしまう。
        もちろんそれは全部、スクリーンのこちらからの想像。
        市子の夢とも妄想ともしれぬシーンも含めて
        人の心の中の迷路をたどったような気分で映画を観終えた。

        舞台ファン、かつての第三舞台ファンにとっては、
        最近の筒井さんの活躍は嬉しいかぎり。
        「淵に立つ」の時よりもさらに美しく、さらに深く「女」。



        | 立石 義江 | 映画観る日々 | 01:21 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
        「COLD WAR あの歌 ふたつの心」
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          2019年7月26日 KBCシネマ 監督:パベウ・パブリコフスキ

          「一緒にいたいだけ」
          ポスターに書かれたコピーは
          ただ一緒にいたいだけでは一緒にいられなかった時代だからこそ。
          1950年代、冷戦下のポーランドで出会った歌手とピアニスト。
          引き裂かれ、再会し、また別れを繰り返す十数年に渡る愛。
          もしくはくされ縁。

          時代に引き裂かれた悲恋。
          には違いないが、その時代背景はほとんど説明されない。
          時代を映すのはいつも音楽。
          出会いはポーランドの音楽舞踏団。
          亡命した男が暮らすパリのナイトクラブに響くジャズ。
          アメリカンポップスからラテンまで。
          モノクロのソリッドな画面は
          時の流れとともに疲弊していく男と
          妖艶さと意志の強さを増す女の瞳を映す。
          数年ごとに別れと抱擁をくりかえす二人の姿は
          いつもぷつりと暗転の闇に消える。
          「一緒にいたい」というシンプルな願いが
          年齢を重ねるほどに情熱的、衝動的になって迎えるラスト。
          若い時の情熱とは違う熱。
          年齢をとって少しわかるような気がするんだな。
          残された時間を、確かに選び取っていきたい。

          | 立石 義江 | 映画観る日々 | 12:23 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
          「ホット・ギミック ガール・ミーツ・ボーイ」
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            2019年7月5日 ユナイテッドシネマももち 監督:山戸結希

            なんだ、こりゃ?
            登場人物みんな病んでるというか歪んでるというか
            誰にも感情移入できない。
            これ、単なるジェネレーションギャップじゃないよね。
            今の中高生がみんなこんな風だったら怖いよね。
            そのくせ、面白くなかったわけじゃなくって
            振り回される展開や、思わぬ映像、
            まるで別人のように役者の顔が違って見える瞬間に
            目をひかれ、目をはなせない。
            なんだかわからんけどやられた、と思ったけど
            これ、「溺れるナイフ」と同じ監督なんだ。
            印象的な絵づくりや揺れる感情をそのまま映したような映像、
            何より、菅田君と小松菜々をむちゃくちゃ魅力的に撮った映画。
            自分的に、この映画から目が離せなかった理由には納得がいったけど
            やっぱりわからない。
            「勝手にふるえてろ」とか「愛がなんだ」とかも
            かなり歪んでイタい恋愛だったけど、
            その時はイタいけど愛しいよなーと思ってた。
            もうわからなさの具合がわからない。
            若い子の感想が聞きたい気もするけど
            聞いてもやっぱりわからないんだろうなー。


            | 立石 義江 | 映画観る日々 | 22:57 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
            「ビューティフル・ボーイ」
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              2019年4月12日 中洲大洋 監督:フェリックス・バン・ヒュールニンゲン

              私はどうも薬物やギャンブルにはまる人には思い入れできないらしい。
              身勝手なもので、これが酒や男に溺れるだと感情移入できる(笑)。
              この映画も父と息子のどちらにも今ひとつ感情移入できないまま終わってしまったなぁ。
              文字通りビューティフルなボーイ、
              ティモシー・シャラメ演じる美しく優秀だった息子が
              ドラッグに溺れ壊れていく。
              父親はもちろん、離婚して別れて暮らす母親も、
              父親の現在のパートナーも弟・妹も
              みんないい人でみんなが彼に手をさしのべているのに
              何度も立て直そうとするのに
              壊れ堕ちていく彼をとめることができない。
              どちらかというと堕ちていく息子の物語というより、
              何ができることはあるのか、何もできないかもしれないという
              責任感と無力感、息子への愛に揺れ続ける父親の物語。
              ただ「信じる」、
              ただ「愛する」こと以外にできることなんかないんだろうな
              ぼんやりとはわかるけど、
              正直、こんなんムリーと投げ捨てたからとて誰に責めることができるだろうか。
              その境目みたいなものがどうにもわからないのは
              やっぱり私が子供側の視点しかもってないからなのかなぁ。

              | 立石 義江 | 映画観る日々 | 23:58 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
              「新聞記者」
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                2019年7月14日 なんばパークスシネマ 監督:藤井道人

                公開当初からすごいすごいと話題の映画。
                「主戦場」と並んで参議院選挙前にうどうしてもみたかったので、
                なぜか空き時間のあった大阪で鑑賞。
                日曜の真昼間の込み合うなんばの映画館で
                やや年齢層高めの客席、ほぼ満席。
                「主戦場」はドキュメンタリーなのにものすごくドラマチックな構成で、
                こちらはフィクションなのに、ノンフィクションのように限りなく現実を追っかけて行く
                その対照がおもしろいなと思った。
                てか、正直言うと、前半「現実」を追っかけすぎて
                これ「映画」として面白いのだろうかとちょっと戸惑った。
                こういう現実に基づいた映画で
                フィクションとノンフィクションの境目って難しいなぁと思った。
                前半のレイプ事件のもみ消しや、森友・加計をめぐる学校設立の案件が
                現実とあまりにも重なるゆえに、「研究の軍事利用」とか「内閣調査室の怖さ」とか
                日頃の報道であまり耳なれない部分を
                「こんなこともありうるよね」とそら怖ろしく思うか
                「ここはフィクション、お話なのね」と逆にスクリーンの向こうの出来事として
                安心してみてしまうのか、観客によってわかれそうだし、
                映画自体の面白さもそこで意見がわかれそうだよねーと思ってしまった。
                うまく言えないけど、フィクションとして映画として、
                もうひとひねりして
                現実とは違う事件を持ってきたほうが怖かったかもと。
                私がことさらに「ドラマ」好きってことだからでしょうけど。
                桃李君が生まれたばかりの赤ちゃんをみて「ごめん」と泣く顔に笑い泣き、
                「このままでいいんですか」と問うシム・ウンギョンの言葉が胸にささり、
                狂気さえ感じるほどの鬼気溢れる田中さんの迫力に戦慄したので
                ドラマ好き心は十分に満足できたのでよしとしよう。

                去年、二兎社の「THE空気VER2」を観た時に、
                もうこんなふうにタイムリーに政治問題をテーマにできるのは
                演劇だけかもしれないと思った。
                もう日本のメディアはテレビも新聞も政権批評的なことはできないと。
                でも、日本映画でこれだけのものがつくれて、
                しかも話題になっていることは喜ばしいことだと思う。
                韓国映画の「トガニ」みたいに
                映画が引き金になって改めて犯罪が暴かれる、
                ってところまでいかないまでも、
                こういう映画がヒットする流れはたのもしいとは思ってる。

                | 立石 義江 | 映画観る日々 | 20:39 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
                「さらば愛しのアウトロー」
                0
                  2019年7月13日 KBCシネマ 監督:デヴィッド・ロウリー

                  えーとね、ロバート・レッドフォード主演とうたってなかったら
                  気づかずに観ちゃったかもしれないくらい
                  すっかりおじいちゃんになったレッドフォード。
                  これが女優ならすぐ「劣化」とか言われちゃうんだろうなぁ。
                  でも、おじいちゃんレッドフォードは
                  ジェントルでお茶目で、そしてあいかわらずのいい男。
                  まぁ妻や娘や、身近な女性からすれば
                  どうしようもなくダメンズであるという部分は
                  「運び屋」のイーストウッドと同じかな。
                  あと味苦い現実味をとるか、
                  大人のおとぎ話のような結末をとるかで
                  好みがわかれそうなところ。

                  「アメリカン・アニマルズ」の若者たちの強盗シーンとか思い出して
                  この爺さんたちの、スマートで堂々とした強盗っぷりが
                  気持ちいいやら笑えるやら。
                  それでも「俺たちならもっと大きなヤマがやれる」なんて
                  酒呑みながらしゃべる姿は、
                  「男の子っていくつになっても男の子」を感じさせて
                  ほほえましい。

                  ロバート・レッドフォードの俳優引退作ということに最大限の敬意を払った
                  邦題タイトルも悪くないけど、原題の「OLD MAN AND THE GUN」も好きだなぁ。
                  破天荒な生き方とはうらはらに、撃たれることのない彼の銃。
                  粋なタイトルだよねぇ。



                  | 立石 義江 | 映画観る日々 | 23:30 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
                  ナショナルシアターシリーズ「イェルマ」
                  0
                    2018年10月3日 中洲大洋 演出:サイモン・ストーン

                    え?これ舞台なの?
                    もちろん私は映像を通して鑑賞したわけだけど、
                    登場人物とともに数年を過ごしたかのような密な時間のつくり方は
                    じっくりと時間をかけて撮影した映像作品のよう。
                    怒涛のような数年分の希望も絶望も焦りも苛立ちも、
                    すべてを数時間の舞台で経験するって役者としては過酷だろうなぁ。
                    なんてつい、役者の側から考えてしまう。

                    1934年に書かれたガルシア・ロルカの戯曲が
                    現代のロンドンの、いわゆる妊活に苦しむ夫婦の話になる。
                    原作を知らずに観たのだけれど、
                    いつの時代の女性たちも
                    ロルカの描くどろどろの情念からは解放されないということか。
                    スペインの明るい太陽、光に対する影の部分があの情念ならば
                    この演出での光は、キャリアやSNSのフォロワー・スタイリッシュな生活なのか。
                    生む性の抱える性愛の呪縛。
                    何を手に入れようと解けない呪い。
                    目を背ければ女でなくなるようでそれもまた怖ろしいんだな。






                    | 立石 義江 | 映画観る日々 | 14:33 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
                    「シンプル・フェイバー」
                    0
                      2019年4月1日 ユナイテッドシネマキャナルシティ13 監督:ポール・フェイグ

                      予告編を観てすごい期待してたのに、
                      映画友からちっとも評判が聞こえてこない。
                      んー、そうか。あのオシャレな予告編は
                      まさに「オシャレな映画」ってことだな、
                      とハードルをかなり下げてから見に行ったので、
                      まぁそれなりに楽しめた。
                      ブレイク・ライブラリーのゴージャスさとか、
                      アナ・ケンドリックのダサかわいさとか、
                      ヘンリー・ゴールディングのムダーにハンサムでみごとなヒモっぷりとか。

                      お話はね、「ゴーンガール」みたいなおしゃれサスペンスを期待していたら、
                      豪華な2時間サスペンスだったという感じ。
                      前半の二人が友達になってく過程の
                      「こいつ何たくらんでるんだ?」感とか
                      コメディかと思うほどのアナの探偵っぷりとかは
                      笑えたんだけどね。
                      ラストに向けての
                      「実は○○でした」
                      「実は警察が見張ってるのよ」
                      「実はそれに気づいていたのよ」の「実は」合戦がすごい。
                      予告編では思わせぶりだった
                      上司や画家の女がほんとに思わせぶりだけで終わるとかね。

                      ママ友あるあるのやりとりは日米共通なのかしら?
                      アナの動画ブログがすごくアメリカ的だなぁと思った。



                      | 立石 義江 | 映画観る日々 | 12:39 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |