「華氏451度」
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    2018年11月4日 兵庫県立芸術劇場中ホール


    言わずと知れたレイ・ブラッドベリのSFの名作。
    というわりには、このチケット買ったあと慌てて読んだ。
    正直、ちょっと哲学的で難しい小説だと思った。
    SFってそんなものなのかも知れないけれど。

    「本」が禁じられた世界。
    人々は液晶パネルから垂れ流される情報に依存し、
    ハイウェイでのスピードレースにしか生きている実感をみいだせない。
    戦争が近いことを示す戦闘機のジェット音にも麻痺している。
    ファイアーマンのガイは、摘発された本を焼く仕事に何の疑問をもたぬどころか
    炎への快感すら感じていたのに、ある少女と出会ったことで歯車が狂ってゆく。
    65年も前に書かれた小説が、色あせないどころか
    まさに現代の縮図。
    人は本よりもネットやTVに依存し、
    目の前の「喜」や「楽」の感情だけをとりこみ
    「怒」や「哀」からはは目をそむける。
    与えられた快楽や規則には疑問を持たず
    戦争の影にさえ麻痺していく。

    原作の小説が素晴らしいのは言うまでもないけれど、
    演劇の力。
    画として見えることで迫ってくるもの。
    冒頭の「本が燃える」シーンだけで
    もうぐっと胸がつまってしまった。
    だって、本が大好きで、毎日でも図書館に行くような子どもだったんだもの。

    7人で主役の吉沢さん以外は一人何役もこなす役者さん達。
    衣装や小道具を替えながら演じるけれど、
    時にそのまま前のシーンの役のセリフを言ったりするのが
    ガイの頭の中のフラッシュバックのよう。
    ガイの頭の中がかきまわされ、観客の緊張感も高まる。
    前から4番目といういい席で吉沢さんの想像以上にいい身体を堪能できたのも眼福。
    堀部圭輔・吹越満というバリ渋の脇役、ガイを巡る重要な女性二人から鹿や機械犬まで演じて大活躍な美波ちゃんのきゃしゃでしなやかな身体と、もう視覚情報もいっぱいいっぱい。

    ちょうど前日に観た「6週間のダンスレッスン」が美しい夕焼けで終わったのと対照的に、
    この芝居は美しい朝焼けで終わる。
    戦争で打撃を受けたであろう町にのぼる朝日。
    繰り返す人間のおろかな歴史に
    積み上げられた知を持って立ち上がる人達。
    今の私たちにできることはまだあるのだろうか。


    | 立石 義江 | 芝居観る日々 | 12:34 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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