ヒカリノオト「さよなら、サンカク。」
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    2019年2月7日 なみきスクエア

    もう、この作品に関しては正直客観的な目でみられない。
    初演時に今までにない難しい役をもらって
    今回もスタッフとして受付まわりも手伝わせてもらって
    ほとんどうちわなんだから、純粋に観客としての感想にはならないけど。

    冒頭、二組の親子が会話がだんだんと重なりあっていき
    しまいには大音量の中で明子と正輝が走り、踊るシーン。
    初見の人ならポカンとしてしまうだろうあのシーンでもう滂沱の涙。
    これから、いや、これまでの明子の身に起きたことを思って
    既に冷静ではいられない。
    明子があの5年間を思い出す時、彼女の頭の中はこんなカオスな状態なのだろうか。
    初演時は、登場人物の一人として没入しすぎて見えなかったものが
    見えてくる、というより迫ってきて
    でも鶴子としての気持ちも自分の中のどこかに残っていて
    私の頭の中もカオス状態。

    初演時と会場の広さが違うこともちゃんと生かしてた。
    あの茨で囲まれたような部屋への廊下。
    客席と舞台の距離があることも観客にとってはよかったかも。
    初演時はあの空間の閉塞感があまりに辛かったという声もあったしね。
    ちょっと俯瞰で見られたことで、
    明子以外の人物にもそれぞれの思いや立場があることがより明確になったよう。
    何よりキビるフェスという、他地域からの劇団も参加する場で
    福岡の劇団のひとつとしてこの作品が紹介されたことが嬉しい。
    ほのぼの路線の作品もあるヒカリノオトさんですが
    福岡にはあまりないタイプの芝居としてこの路線も
    推していきたいなぁ、なんて個人的な好みですけど。

    | 立石 義江 | 芝居観る日々 | 22:12 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    「教誨師」
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      2018年11月26日 KBCシネマ 監督:佐向 大

      この映画で初めて知った「教誨師」というお仕事。
      刑務所で受刑者に対して説教し、罪を悔い改める手助けをする宗教家。
      大杉さん演じる牧師佐伯は6人の死刑囚と対話する。
      てか、映画はほぼ密室での対話のみ。
      佐伯の回想シーンはあるけれど
      死刑囚がどんな事件を起こしたのかも
      会話の端々から観客は想像するしかない。
      外界とのコミュニケーションが一切ない死刑囚たちにとって
      教誨師である佐伯は唯一の話相手でもある。
      彼に心開く死刑囚もあれば、
      全く反省の色をみせない者、ただの話相手のように扱う者もいる。
      自分の無力さや言葉のむなしさに悩みながらも
      真摯に死刑囚と向き合い続ける佐伯。
      生と死と
      犯罪と社会と
      そして自分自身の過去とも向き合い続ける佐伯の姿は
      役者としての大杉さんの姿とも重なってくる。
      「演じる」ということはそういうことなのかもしれないなと思った。
      自分の演じる人物にとことん向き合うこと、
      自分の過去や自分の中にある触れたくない部分にも向きあうこと。
      「宗教」というより大杉さんの役者としての哲学みたいなものに
      触れた気がした映画だった。
      宗教を通じて人と向き合うのが教誨師さんだとしたら、
      私たち演劇人(と言う言葉が適切かはわからないけど)は
      「演劇」を通じて人と向き合い、
      社会や人生と向き合おうとしているのかも知れないな。
      この映画とは関係ないけど、鴻上さんの人生相談を思い出した。
      本当に相談者の気持ちに寄り添って、さらにそのひとつ先の、
      相談者自信がうまく言葉にできない部分までふみこんで、
      しかもそれをきちんと言葉にしていく彼の回答はいつもおみごと。
      「演劇」ととことん向き合ってきた鴻上さんだからこその言葉なのだろうと
      思っていたこととこの教誨師というお仕事が重なった。
      本当の宗教家の人からは怒られるかもしれない感想だけど。

      死刑囚を演じる役者さんの一人に
      監督の友人である素人さん、というと失礼だけど
      本当に普通の寝具屋さんの男性がいて、
      ごくごく普通の人が「死刑囚」という特別な人間になってしまう、
      そのことが怖ろしくもリアル。
      いや、もちろん6人の死刑囚の役者さんはみんなよかった。
      玉置玲央君は「人殺しの目」をしていたし、
      彼が映画初出演にして、この役で毎日映画コンクールの新人賞をとったことは
      とてもうれしい。
      舞台役者であった大杉さんからバトンを渡されたような賞をもらって
      ますます活躍の場を広げていくんだろうと。

      | 立石 義江 | 映画観る日々 | 14:26 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
      こふく劇場「ただいま」
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        2019年2月1日 パピオビールーム
        ここちいい。
        ちゃぶ台のある懐かしい光景。
        からくり人形のような整然とした役者の動き。
        歌うような宮崎弁のイントネーション。
        すべてがここちいい。

        当たり前のような人の営み。
        出会って結婚して子供ができて年寄りが死んで。
        でもそれぞれの胸にはそれぞれの思いがあって
        それもまた当たり前のことなのに
        人はその思いを日常の中に埋めようとする。
        失くしたものへの熱い憧れ、苦い後悔、伝えきれなかった温かい思い。
        胸に渦巻く思いを抱えて
        それでも野菜を刻み、魚を焼き、日々を過ごす。
        ああ、私も生きているね。
        ていねいに生きていきたいね、と沁みていく思い。

        まるで合唱でもしているようなコロスのセリフ。
        あえてセリフと切り離したような動きの繰り返しは
        ちょっと維新派も思い出したな。
        脚本はどうなってるんだろう?とか。
        ユニゾンの美しさという意味では
        おこがましいけど、私たち月光亭の4人落語も思い浮かべた。
        人の声が重なり合うここちよさ。

        | 立石 義江 | 芝居観る日々 | 14:04 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |